心療内科・精神科
東京都中央区
日本橋人形町
1-1-21
人形町ビル3F
03-5614-7087

COVID-19におけるストレスと対処について

CDC:米国疾病予防管理センター 2020年4月より抜粋し当院で解説)

○ 「ストレス」と「対処」について

新型コロナウイルス(COVID-19)のアウトブレイク(感染の拡大)は、人々に強いストレスを与える可能性があります。感染に対する恐怖や不安は圧倒的なものであり、子供や大人にも強い感情的な反応をもたらしえます。ストレスに対処できれば、自分や大切にしている人達、そしてコミュニティーがより強いものとなるでしょう。

○ 危機的なストレスに対し、より強く影響を
受ける可能性がある人

 高齢者や高血圧症、糖尿病、慢性閉塞性肺疾患などの慢性疾患を持つ人はCOVID-19が重篤化しやすいため、感染への恐怖が強く精神的に常に高い緊張状態におかれます。小児や若年者は学校の閉鎖により、教育の機会が失われるばかりでなく虐待や貧困の問題に直面します。また子供たちは状況の把握やストレス対処法が十分に身についていないため周囲の状況に翻弄されてしまいます。子供たちは周囲の大人を手本に対処しようとするので、大人たちが落ち着いた正しい態度でいることが大切です。医療保健福祉関係者は感染の恐怖を抱えながら見えない敵と戦うストレスに加えて、感染のリスクが高いゆえに、社会的に理不尽なストレスも受けることがあります。また、精神的健康状態に問題を抱える方につきましては、感染症の流行によって感情面で強い影響を受けやすく、既存の精神疾患の再燃または悪化を引き起こす可能性が指摘されています(Lancet Psychiatry. 2020 Apr;7(4))。


○ 感染症が拡大した時のストレス反応

  目に見えず、得体のしれないウイルスへの恐怖、マスク・消毒などの感染防御品や日用品の不足、さらに社会活動が停止することによる経済的な不安など、緊張が高まりやすい状況です。自身や大切にしている人の安全を守りたいという気持ちが強くなるのは自然なことです。一方で警戒するあまりに疑心暗鬼や不寛容になったり、時に利己的になったり、差別的になったりもしてしまいます。そして、そのような自分に嫌悪感が生じて辛くなることもあるでしょう。これは心身ともに緊張が高まり余裕を失っている状態です。そのような時は、不安、イライラ、落ち着きのなさ、集中力の低下などの心の変化や、不眠、肩こり、頭痛、動悸、息苦しさ、めまい、吐き気、疲労感などの体の変化が現れています。睡眠のリズムが乱れ不眠や過眠になったり、食欲についても低下したり亢進したりします。高血圧や糖尿病などの慢性疾患の状態が悪化することもあります。急性のストレスは適応障害などを、持続するストレスは不安障害やうつ病などをもたらす危険性があります。さらに心身の不快な症状を紛らわせようとして飲酒量の増加や薬物の乱用が起こることがあります。中国でのオンライン調査においても、回答者の53.8%が中等度から重度の精神的な影響を受けており、16.5%が抑うつ症状、28.8%が不安症状、8.1%が中等度以上のストレスを抱えていました(Int. J. Environ. Res. Public Health. 2020;17(5))。


○ ストレスに対処する方法

  ストレスによるダメージを防ぐためには、なるべくこまめに緊張を緩めて持続させないことが大切です。現状において、緊張を高める大きな原因の一つが情報です。情報の過多はストレスになるばかりでなく、かえって大事なものを見落としてしまいます。ワイドショーやネット情報からは距離をとり、信頼できるニュースを確認される程度が良いと思います。自宅での生活が続くと、生活のリズムが乱れがちになりますので、十分な夜間の睡眠と適度な日中の運動を行い、決まった時間に食事を楽しんでください。気分をリラックスさせるために音楽、アロマ、ストレッチ、腹式呼吸、ヨガ、瞑想などをされるのが良いと思います。ストレスで伸びてしまっている心のバネを伸びきる前に元に戻してあげてください。アルコールは落ち着かない気分をリラックスさせて睡眠を促しますが効果は一時的です。飲酒を続けていると徐々に効かなくなり、アルコールが切れたときにかえって不安や不眠が強くなります。そのうえ依存症におちいる危険もありますので控えてください。コーヒーなどのカフェインも疲れたときに飲みたくなりますが、イライラや不安を増強することがあるので注意してください。このような状況では頭痛薬や咳止め薬などの乱用、非合法薬物の使用におちいるおそれもあるので注意が必要です。
 感染予防のためにほとんど自宅で過ごされている方が多いかと思いますが、自分で望んで家で過ごすのとは異なり、現状では自由を奪われる閉塞感もあるでしょう。また、家に一人でいる場合は、誰とも話さないときには孤独感も現れるのではないかと思います。 外からの情報が少なくなってしまうと、内向して心の内側からの情報で頭がいっぱいになります。新型コロナウイルス感染症の先が見えないこと、ネガティブなニュース、自宅での閉塞感も手伝って、あまり根拠のないネガティブな事柄を次々に想像してしまいます。 このような状態から解放されるために心の外側に意識を向けるような行動をしましょう。家族内での会話を増やしたり、信頼できる人とお互いの気持ちについて電話やオンラインで会話(できれば音声や映像付きで)するのが良いと思います。また散歩やジョギングは人混みを避ければ安全です。その際に考え事をしながらではなく、外の景色に注意を払ってください。季節の変化に目を向けて、何かを発見しようとするとよいと思います。日によって違うコースにすると意識を外に向けやすいです。想像していたことと実際が違うと感じられるはずです。不自由な生活で大変とは思いますが、時間の余裕ができるなど少しでもポジティブな面を見て、こんな時だからこそできる楽しいことや目標をみつけて主体的に行動することが大切です。


○ ストレス軽減に役立つ事実を知る(事実が大事)

 正しい情報(事実)に基づいて行動することが大切です。誤った情報に基づいて行動すると、誤った考えが定着してしまいます。根拠が乏しかったり、感情的な色彩が強い情報に振り回されないようにしましょう。問題解決につながるのは目立つ情報や自分の考えに合った情報ではなく事実です。たとえ専門家の意見であっても、その通りに事態が進んでいるか確認して信頼性を検証することも必要です。


○ メンタルヘルス(心の健康)を大切にする

 国や自治体、マスコミによる自粛要請や注意喚起は感染拡大を防ぐためには有効ですが、メンタルヘルスに対しては負担がかかることが多いのが実情です。心身の不調が持続したり、生活上の支障が現れた場合は、早期に専門の医療機関に相談してください。また、メンタルヘルスの問題を抱える方は、COVID-19の流行によって感情面で強い影響を受けやすく、既存の精神疾患の再燃または悪化を引き起こす可能性が指摘されている(Lancet Psychiatry. 2020 Apr;7(4))ことから、普段以上に自身の状態に注意を払い、治療を継続する必要があります。