
一つのことに打ち込むということは素晴らしいことです。
スポーツ、芸術、学問、仕事などに打ち込み、偉業を成し遂げる姿には感動を覚えます。
彼らの能力と業績への賞賛の気持ちと同時に、彼らが自身の時間、精神、身体の殆どを、一つのことに注いで成し遂げてきた強い精神力への感動があるのです。
しかしながら、自分自身を一本柱のみで支えることには、例えそれが太い丈夫なものであったとしても不安定な危うさを伴います。
柱が1本の場合、突然強い衝撃が加わったり、気付かないうちに傷んだり、害虫がついたりしてしまうと、1本しかありませんので、どうしても基盤を揺るがすような動揺が起こるのです。
たとえ、その時は上手く行っていたとしても、同じ状況にいる限りは常に危うさを持ち続けるのです。結果として、一つのことに打ち込んだものの上手く行かずに、自分のアイデンティティーを見失ってしまうようなことも少なからずあります。
ありふれた社会生活においても、仕事や恋愛などの1本柱で自身を支えて生活してしまう方も多いのではないでしょうか。
仕事に打ち込み、健康、家庭、友人、趣味などを犠牲にしたり、交際相手に夢中になって、仕事、友人、自分さえもないがしろにしてしまう方もいらっしゃいます。
これらは1本の柱への「とらわれ(Toraware)」 が生じて、その1本柱に依存してしまった状態です。
仕事や恋愛が上手くいっているうちは良いのですが、これらの柱も自分の力だけでは揺れるのを防ぐことはできません。
一旦揺れが始まると他に支えもないので、直接的に本人を動揺させます。
そうなると、動揺を防ぐために、ますますその柱を支えるためにエネルギーを費やし消耗してしまい、かえって不安定な状況が悪化します。これらは、「1本柱が、唯一自分を支えているものである」との誤ったイメージから起こることです(この誤ったイメージが他者により作為的に作られるのがマインドコントロールです)。
しかし、私たちは、一つのことにとらわれている時はあまり自覚できませんが、実際は、健康、家庭、友人、趣味など複数の柱で支えられているのです。一つのことだけにとらわれている時は、それらの他の柱は細くなってしまってしまい意識できないだけです。
どのように太い柱であっても、揺れてしまい、どうにも抵抗できないことがあります。
そのような場合は揺れが治まるのを待つしかありません。その柱の揺れになるべく影響されないようにするためには、これまで細くなっていた柱を強化して、代わりに支えられるようにすることが大切です。
例えば、家族関係を大切にしたり、友人と会うようにしたり、運動や趣味を再開したりするのが良いと思います。
前述のように1本柱の揺れを防ぐことに執着してかえって動揺が悪化するのは、消耗してエネルギーがこれらの他の柱に行き渡らないからです。このような「とらわれ(Toraware)」 の状態では、他の柱がますます細くなって、自身を支えられないのです。
柱の太い、細いはあっても、日ごろから複数の柱を意識してバランスをとり、一つの柱が揺れ始めても、他の柱で支えて自身が動揺しないようにしておくことが大切です。そのためには、支えられるだけでなく相手を支える利他的な行動も大切でしょう。
複数の機能的な柱を持つことが、ストレス耐性を向上させるためにも重要になります。人は様々な支え合いの結びつきの中にあってこそ、安定して過ごせるのです。
