中央区日本橋の心療内科・精神科,人形町メンタルクリニック

心療内科・精神科
東京都中央区
日本橋人形町
1-1-21
人形町ビル3F
03-5614-7087

適応障害(Adjustment Disorder)


適応障害の説明図

うつ病・うつ状態パニック障害社会不安障害
全般性不安障害強迫性障害適応障害不眠症


適応障害 Q&A

適応障害はどんな病気ですか?

どなたでも辛い出来事や思いどおりにならないこと(社会生活上のストレス)によって、不安やイライラが強くなったり(不安感)、悲しみや憂うつになったり(憂うつ感)、時に投げ出したくなったり、自棄になったり(逸脱行動)することは、経験したことがあると思います。適応障害は、これらの社会生活上のストレスに対する反応が、多くの方が感じられる以上に強く現われ、仕事上、学業上、家庭内の生活が著しく障害された状態です。つまり、適応障害は、社会生活において、誰でも遭遇し得るストレスによって、予想外に精神的ダメージを受けた状態と言えます。予想外に精神的ダメージを受けてしまう背景には、周囲のサポート不足や本人の精神的な弱点が関与していると考えられています。

適応障害ではどのような症状がみられますか?

適応障害の症状は、ストレスに対する正常な感情的反応(ストレス反応)の延長線上にあるものです。従って、症状の内容はストレスの内容と、症状の経過はストレスの経過と密接な関係があるという特徴があります。そのため、症状はストレスと状況、さらに本人の性格によって様々ですが、主に以下の4つの状態に大別され、これらの何れかが目立った状態、またはいくつかが混合した状態となって現われます。

○不安症状を中心とする状態
  不安、恐怖感、焦燥感などと、それに伴う動悸、吐き気などの身体症状

○うつ症状を中心とする状態
  憂うつ、喪失感、絶望感、涙もろさなど

○問題行動を中心とする状態
  勤務怠慢、過剰飲酒、ケンカ、無謀な運転などの年齢や社会的役割に不相応
   な行動

○身体症状を中心とする状態
  頭痛、倦怠感、腰背部痛、感冒様症状、腹痛など

単なるうつ気分、適応障害によるうつ症状、うつ病による抑うつ気分
との違いはどんな所ですか?

単なるうつ気分、適応障害によるうつ症状、うつ病による抑うつ気分との違いは、ストレスをオモリ、憂うつの程度をバネの長さに例えると、伸び縮みするバネ、伸びすぎたバネ、伸びきったバネの違いに例えられると思います。何か嫌な出来事や悲しい出来事で、憂うつな気分や悲しい気分に沈むのはどなたでも経験しますが、問題となっていた出来事が解決したり、何か良いことがあったりすると、すぐに安心したり楽しい気持ちになったりしますし、時間が経つことでその気持ちが和らいだりしているはずです。バネが伸び縮みするように柔軟に気持ちが変化できます。適応障害によるうつ症状では、ストレスによりバネが過剰に長く伸びてしまい無理がかかっている状態に例えられます。予想以上に憂うつが強くなり社会生活に支障が現われた状態ですが、バネの伸び縮みする力はまだ保たれており、ストレスがかかった後、間もなく出現し、ストレスが消失すれば、症状は速やかに軽減するのが通常です。それに対して、うつ病による抑うつ気分は、問題となっていた出来事が解決しても、何か良いことがあっても、安心したり楽しい気持ちになったりせず、様々なことが憂うつに感じられ、時間がたってもその気持ちが持続します。伸びきったバネのように、気持ちが変化しません。また、ふつうバネはすぐに伸びますが、伸びきってしまうのには時間がかかります。同様に、単なるうつ気分や適応障害によるうつ症状は出来事のあとすぐに現われるのに対して、うつ病による抑うつ気分は、ストレスが数ヶ月続いた後に出現します。その他、うつ病では、早朝覚醒、日内変動などの特徴的な症状をともなうことも重要です。

症状が社会生活におよぼす影響はどのようなものがありますか?

適応障害の症状が社会生活におよぼす影響は、ストレスの要因によって様々ですので、職場がストレスの場合を例にあげて説明します。不安症状が強い場合は、ストレスに近づくにつれて不安や恐怖感が強くなります。出社しようとすると、不安・緊張が強くなり通勤途中で動悸・吐き気が強くなり出社が困難となることがあります。また、うつ症状が強い場合は、ストレスに直面しそのことを考えたりすると、憂うつ、喪失感、絶望感が現われ、職場で突然、泣いたり、涙を流したり、仕事への意欲が失われ仕事の効率が落ちたり、集中力の低下からミスが現われたりします。一方、ストレスが身体に現われる場合もあります。頭痛、倦怠感、腰背部痛、感冒様症状、腹痛などにより、活動性が制限されてしまい、さらに病院受診を繰り返すことになります。問題行動としては、ストレスを回避したくなり、遅刻、早退、欠勤などの勤務怠慢が現われたり、短絡的に自暴自棄となり、過剰飲酒、ケンカ、無謀な運転など年齢や社会的役割に不相応な行動が現われたりします。その一方で、ストレスの原因が会社など限局的な場合は、会社にいないときや休日などは、比較的症状が軽いということもあります。

どのような人がなりやすいと考えられていますか?

環境面においては、相談や支援してくれる人がいなかったり、孤立した環境であったり、多忙な環境であったりするなど、周囲からのサポートが得られにくい状況の方はなりやすいと考えられます。一方、社会生活において、誰でも遭遇し得るストレスによって、適応障害になる人もいれば、ならない人もいることから、精神的な弱点の関与は否定できません。ストレスに遭遇した際、それを乗り越えて適応することによって、ストレス耐性が高まり、ストレス対処能力も向上し、人格的向上がはかられると考えられています。しかしながら、素因やストレス経験が不十分なために、ストレス耐性の弱さ、ストレスへの対処能力のなさ、未熟な性格があると、ストレスを乗り越えることができずに、心身のストレス反応が強くなって持続したり、逃避的行動が現われたりして、適応障害となることがあります。但し、この場合の精神的な弱点とは、あくまでも相対的かつ限定的なものであり、絶対的または全般的なものではありません。それは、ある厳しい環境の中で適応障害になったからといって、他の厳しい環境の中で適応障害になるとは限らないということです。つまり、適応障害はストレスと本人のミスマッチによって起こり、ストレスの内容が本人に対してどのような意味を持つかが重要と考えます。

適応障害のきっかけとしてはどのようなものがありますか?

主な原因となるストレスは、仕事、家庭、恋愛、学校、病気などがあります。仕事については、上司を中心とした職場の人間関係、異動による仕事内容や環境の変化、仕事量の多さや責任の重さなどがあり、家庭については、夫婦の不仲、義理の両親との関係、育児や教育の問題、引越し、経済的問題などがあり、他にも結婚問題、失恋、転校、いじめ、受験の失敗、慢性疾患、ガン治療などさまざまなものがあります。

どの位の人が発病するのでしょうか?

精神科に通院している患者様の10%以上が適応障害であるとされています。実際の臨床場面では、より大きな割合で適応障害の患者様は受診されており、さらに徐々に増えていると感じております。平成17年のうつ病を中心とした気分障害の患者数は92万4000人で、平成11年の約2倍に増加しましたが、私はこの中にも適応障害の患者様、もしくは適応障害から感情障害に発展された患者様が多く含まれているのではないかと考えております。

適応障害を疑ったらどうしたらよいのですか?

早期に適切な対処および治療を受ければ、多くの患者様は回復すると考えられています。しかしながら、適応障害から、うつ病、アルコール依存症、反社会性人格障害などの他の精神障害に発展してしまう患者様も少なからずいるとされています。ストレスを強く感じたら、できるだけ早期に周囲に相談したり、支援をもとめたりすることが重要です。心身の反応が辛い、自身での対応が困難、支援を得られにくい、判断に迷う場合は心療内科や精神科を受診されることをおすすめいたします。

家族や周囲が気づいた場合はどうしたらよいのですか?

適応障害の回復において、家族や周囲の果たす役割は大きいと考えます。まずは、相談に応じるという姿勢が大切であり、その上で本人が主体的にストレスに適応できるように環境を調整したり、支援したりすることが重要と考えます。ただし、本人の適応力を過小評価して、過剰な同情、支援、配慮をすることは、本人の主体性を奪い、社会的責任を回避させることとなり、現実逃避的な反応を助長します。そのため、かえって症状が強化されてしまい回復を妨げることになるので注意が必要と考えます。

適応障害にはどのような治療がありますか?

適応障害の治療は、患者様が主体的にストレスに適応できるよう医学的なサポートをすることにあります。そのためには、まずは、支持的精神療法(詳しくは全般性不安障害の治療を参照して下さい)によって、受容、共感的態度で話しを聞き、不安、緊張、恐怖によって、一時的に機能不全に至った心の働きを支えて落ち着ける必要があります。その中で、適応障害を引き起こしているストレスを同定し、ストレスの内容が本人に対してどのような意味を持つかを理解していきます。その上で、どの様な方法で患者様がストレスに適応できるようになるかを検討します。ストレスへの適応を促す主な方法としては、ストレス耐性を上げる、周囲によるサポート、ストレスの軽減などがあり、これらに対して医学的にサポートしていきます。本人のストレス耐性を上げることは、最も理想的な方法であり、回復の目標でもあります。しかしながら、認知行動療法などの精神療法によって、ストレスへの対処方法を体得してストレス耐性を上げるのには、時間を要しますし心身の不調を抱えた状態では困難な場合もあります。最も合理的と考えられる方法は、周囲によるサポートであり治療の中心となるものです。周囲によるサポートとは、相談にのり、助言や教育を行なうことによって、一緒にストレスへ対処していくことです。この過程において、患者様は精神的にも支えられ、適度にストレスも軽減され、主体性を保ちつつストレスへの対処方法を身に付けることができます。次に、ストレスの軽減ですが、この方法は、一見ストレス関連障害である適応障害の原因療法にも思え、実際に症状を軽減させる最も速効性がある方法であることから多用されています。しかしなが、ストスの減はサポーの中でなわれ適度なのであれば問題ありませんが、回避ど単に端にストレスを軽減させる(職場における休職など)には注意が必要です。ストレスが一時的なもので回避可能なものであれば有効ですが、多くのストレスは持続性のものであり、回避し続けることはできません。適応障害の患者様は、ストレスに対して恐怖、不安をもたれております。従ってストレスが一時的に回避されると強い安堵感が得られますが、その反面でストレスに再度直面することへの恐怖が一層強くなり、主体的にストレスに対処していくことが困難となることがあります。そうなれば、ストレスへの適応力としては低下することになります。しかし、症状が著しかったり、現状でどうしても適応ができなかったりするときは、ストレスを回避させざるを得ないことがあります。その場合は、できる限り主体性を保ち、ストレスへの適応力の低下を防ぐために、患者様に対しては、これは猶予期間であり、いずれはストレスに直面する必要があること、その間にストレスへの対処方法を体得する必要があることを説明して治療していきます。最後に薬物療法について述べます。適応障害の治療においても、薬物療法として抗不安薬、抗うつ薬、睡眠薬などが使用されますが、あくまでも対症療法という位置づけであります。しかし、薬物療法によって心身の症状を緩和させることは、ストレスの回避を最小限にとどめて、サポートや精神療法によるストレスへの対処方法の体得を促す上で非常に有効な療法と考えております。